実はね、僕がゼラチンを抽出した事で一個いい事があったんだよ。
「いつもなら鍋の中がかなり熱くならないと溶けないからなぁ。でもこれなら、少し暖かくなった程度でも、簡単い汚れが落ちそうだ」
お鍋の中から僕がゼラチンを抽出しちゃったもんだから、固まってたお水がサラサラになっちゃったんだ。
そのおかげで、いつもだったら長い間火にかけとかないと洗えなかったのに、ちょっと温めただけで脂が溶けてくれたもんだから、温いお湯の時にごしごし洗うだけであっという間にお鍋がきれいになっちゃった。
「下手をすると午前中いっぱいかかるかも? なんて思っていたが、ほんと助かったよ」
「じゃあさ、僕、お姉ちゃんたちのとこに行ってもいい?」
僕ね、お父さんのお手伝いで一緒にお庭に来たんだけど、お鍋をもう洗い終わっちゃったでしょ?
だからもう他んとこに行ってもいいか、お父さんに聞いてみたんだよね。
「それはいいが、何かやるのか?」」
「も〜! さっきも言ったでしょ? これでお菓子を作るんだ」
そしたら何しに行くの? って聞いてきたもんだから、僕は手に持ってるゼラチンの塊を見せて、お菓子を作りに行くんだよって教えてあげたんだ。
でもねそれを聞いたお父さんはちょっと変なお顔になって、僕に聞いてきたんだよ。
「そういえば、そんな事を言っていたな。でもそんな塊で、本当に菓子なんか作れるのか?」
僕が持ってるゼラチンは抽出で取り出したまんまだから、ちっちゃなボールみたいでしょ?
それにね、それを取り出したブラックボアの皮を煮てたお水は変なにおいがしてたんだよね。
だからお父さんは、それで本当にお菓子が作れるのかなぁ? って思ったみたい。
「大丈夫だよ。これだけだとダメだけどお砂糖とかベニオウの実とかがあれば、おいしいお菓子が作れるんだ」
「そうか。ルディーンがそう言うんだったら、きっとうまいものができるんだろうな」
「うん。お父さんにも後で食べさせてあげるね」
僕はそう言うと、ゼラチンを持った方の手をお父さんにぶんぶん振りながらお家ん中に走ってったんだ。
お家の中に入るとね、僕はレーア姉ちゃんをさがしたんだよ。
だって僕一人だと、まだ日は使っちゃダメって言われてるもん。
そしたらさ、ご飯を食べるお部屋で椅子に座ってお水を飲んでるレーア姉ちゃんを見つけたんだ。
「レーア姉ちゃん。手伝って」
「あら、ルディーン。何か用事?」
「うん! あのね、今日はお母さんにお休みしてもらう日でしょ? だから僕、お母さんにお菓子を作ってあげようって思うんだ」
僕がレーア姉ちゃんにお菓子を作るんだよって教えてあげたらね、その声が聞こえたのか、他のお部屋からどたどた土立って走ってくる音が聞こえたんだ。
「ルディーン! お菓子作るってホント?」
「あっ、キャリーナ姉ちゃんだ。うん、ほんとだよ」
その足音はキャリーナ姉ちゃんだってみたい。
キャリーナ姉ちゃんは別のお部屋で遊んでたんだけど、お菓子って聞こえたもんだからすぐに走ってきたんだって。
レーア姉ちゃんはそんなキャリーナ姉ちゃんを見てミッコリした後、僕の方を見てこう聞いてきたんだよ。
「それで、ルディーン。何を作るつもりなの?」
「あのね、これを使った新しいお菓子を作るんだ」
僕が手に持ったゼラチンを見せてあげると、レーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんは二人して頭をこてんって倒したんだ。
「透明なボール?」
「なにこれ? これがお菓子になるの?」
二人とも、ゼラチンを見るの初めてだからよく解ってないみたい。
だから僕、これをどうやって使うのか、お姉ちゃんたちに教えてあげる事にしたんだ。
「あのね、これはそのまんま使うんじゃなくって、粉にしてから使うんだよ」
僕はそう言うと、お姉ちゃんたちを連れて台所に移動したんだ。
でね、近くにあったちっちゃなツボの中にゼラチンのボールを入れると、クリエイト魔法を使って粉にして二人の前へ。
「ほら。これをお水とかに入れて溶かして使うんだよ」
「なるほど、塩や砂糖と同じように使うんだね」
見た目がお塩みたいにさらさらだったもんだから、二人ともこれをお菓子に使っても大丈夫って思ってくれたみたい。
だから安心して、僕と一緒にお菓子を作ってくれることになったんだ。
このお菓子はね、前の世界で見てたオヒルナンデスヨってのでお母さんのためにお父さんと子供で仲良く作りましょうってやってたお菓子なんだよ。
だから作り方はとっても簡単だったから、よ〜く覚えてるんだ。
ただ、使ってた果物は当然違うんだけどね。
「レーア姉ちゃん。ベニオウの実から種を取って、ぐちゃぐちゃに潰して」
僕はレーア姉ちゃんにそう頼むと、つぼからお砂糖を出してクラッシュの魔法で細かくしていく。
こうしないとなかなか溶けないからね。
そしたらその間にベニオウの実がつぶれたみたいだから、今度は粉振り器で裏ごし。
でね、僕はそれが入ったお鍋の中に、さっき細かくしたお砂糖をどばっていれたんだ。
「ベニオウの実はそれだけでもかなり甘いのに、かなりたくさんお砂糖を入れるのね」
「うん。これくらい入れた方がおいしいんだよ」
どれくらいお砂糖を入れたらいいのかは、料理スキルで解るでしょ?
だからこれくらい入れないとダメなんだって教えてあげてから、レーア姉ちゃんにお鍋を火にかけてってお願いしたんだ。
「焦げ付かないように、木べらでかき混ぜてね」
「ええ、分かったわ」
いっつもお料理してるレーア姉ちゃんなら大丈夫だからって、僕はまた別の作業へ。
ちょっと深めの小さな木皿にお水を入れて、その中にさっき粉にしたゼラチンをツボからこれくらいかなぁって量を入れてちっちゃな木のおさじでくるくる。
「あっ、キャリーナ姉ちゃん。魔道泡だて器、取って」
「いいよ〜」
出し忘れてた魔道泡だて器をキャリーナ姉ちゃんに出してもらってる間に、粉になってるゼラチンをかき混ぜながら溶かしてったんだ。
「ルディーン。これ、いつまで煮ればいいの?」
「えっとね、とろっとしてくるまで」
「それならそろそろいいんじゃないかなぁ?」
レーア姉ちゃんがもうトロっとしてきてるよって言ったもんだから、僕は大慌てでゼラチンの入った小皿を持ってったんだよ。
でね、木のおさじを使ってゼラチンを溶かしたお水をお鍋の中に全部入れたんだ。
「これでお鍋がもういっぺんぐつぐついうまで木べらでしっかり混ぜながら煮たら、火からおろして泡立てるんだよ」
「煮上がるまで混ぜるのね、わかったわ」
ホントはここで酸っぱい果物に汁を入れるといいんだけど、今は無いからパス。
お水を入れてちょっと冷えちゃったお鍋がもういっぺんぐつぐつ言い出したところで、レーア姉ちゃんはそのお鍋を火からおろしたんだ。
「熱いのが飛ぶと危ないから、泡立てるのも私がやるわね」
火からおろしたって言っても、中に入ってるベニオウの実はすっごくあっついでしょ?
だから泡立てる時に飛ぶと危ないからって、レーア姉ちゃんはやりたそうにしてるキャリーナ姉ちゃんから魔道泡だて器を取り上げてスイッチオン。
そしたら皮が入って赤っぽかったベニオウの実が、段々薄いピンク色になっていったんだよね。
「パンケーキにのせる生クリームくらいになったけど、もういいかな?」
「う〜ん、もうちょっとかなぁ」
いっつも作ってる生クリームはふわぁって感じだけど、これはもっともったりって感じになった方がいい気がするんだよね。
だからもうちょっとの間かき混ぜてもらってると、
「あっ、これくらいでいいかも」
料理スキルが働いたのか、なんとなくこれくらいだなぁって気がしたから泡立てはこれで終了。
「これで完成なの?」
「ううん。これはいっぺん冷やさないとダメなんだ」
僕はそう言うと、銅製のパットを出してきてそれに出来上がったものをその中へ。
泡立てたら増えちゃったもんでぱっと3つ分になったけど、いっぱい食べられていいかって思いながらそれを持ちあげてテーブルの上へ何度かとんとんって落としたんだ。
「スポンジけーっきってのを作る時と、同じような事をするのね」
「うん。こうやって空気を抜いとかないとダメなんだって」
でね、そのパットを冷蔵庫の中へ……って思ったけど、僕の作った簡易冷蔵庫にこんなの入れたらなかがあったかくなっちゃうかもしれないでしょ?
だからそれをテーブルの上に置いたまんまにして、僕はいっつも作業してるお部屋へ。
そこに置いてあったちっちゃな魔石を小売りの魔石に属性変換させると、それをお部屋の中にあった二月の木箱蓋のとこに取り付けたんだ。
「一角ウサギの魔石だけど、活性化させても5時間くらいは大丈夫だよね」
魔石は中の魔力が無くなると壊れちゃうけど、パットの中身は1時間もすれば冷えちゃうから、その前に止めちゃえば多分大丈夫。
って事でその箱を持って台所に行くと、その中にパットを入れて氷の魔石を活性化させた。
「後はつべたくなったのを切って、くっつかないようにとうもろこしの子らを振りかけたら完成だよ」
「そしたら食べられるの? 早く冷たくならないかなぁ」
あとはほっとくだけなのに、キャリーナ姉ちゃんは待ち遠しいのかパットの中身が冷えるまで木箱の前でニコニコしながら待ってたんだ。
冷えたパットの中身を取り出して四角く切った後、それがくっつかないようにとうもろこしの粉を振っていく。
でね、全体にその粉がついてピンク色の白い雪の塊みたいになったらこのお菓子、ギモーヴの完成だ。
「それじゃあ、お母さん呼んでくるから、待っててね」
「え〜、すぐに食べちゃダメなの?」
「当り前じゃないか! だってこれ、お母さんのために作ったんだもん」
キャリーナ姉ちゃんがブーブー言ってたけど、それを無視して僕はお母さんの所へ。
その手を引っ張って台所へ連れてったんだよ。
そしたらさ、それを見たキャリーナ姉ちゃんがすぐに僕からお母さんを取って、ギモーブが置いてあるお皿の前の席に座らせちゃったんだ。
「お母さん、早く食べて食べて」
「えっ? ええ、頂くわね」
自分が早く食べたいからって、お母さんに早く食べてってせかすきゃいr−な姉ちゃん。
それを見たお母さんは、目の前にあるよく解らない四角いものをつまむと、口の中にポイって放り込んだんだよ。
「んっ? これはなんて言うか……ふわふわして、もちもちして、とっても変わった食感ね。それにベニオウの実の香りがすごくして凄くおいしいわ」
「おいしいでしょ? ギモーヴって言うお菓子なんだよ」
お母さんがにっこりしながらお口をもぐもぐしてるのを見て、うれしくなった僕はこのお菓子の事を教えてあげようとしたんだ。
でもね、
「ルディーン。お母さんが食べたから、もう食べてもいいでしょ?」
キャリーナ姉ちゃんがすっごい勢いでこう言って来たもんだから、僕たちも食べる事に。
「おいしいぃ!」
「なにこれ、ふわふわしてるけどスポンジケーキとも全然違うわ!」
そしたらね。その初めての食感にお姉ちゃんたちは大興奮。
あっという間に最初のパットの分を食べちゃったんだ。
「レーア姉ちゃん。早く次のも切って」
「ええ、すぐに切るわ」
その上、残りの分まで食べちゃおうとしたもんだから、僕は慌てて止めたんだよ。
「ダメだよ。お父さんにできたら食べさせてあげるねって約束したもん」
「そうね。それにディックやテオドルに残しておかないと、後で怒られるわよ」
こんなに美味しいんだもん。
お兄ちゃんたちもきっと、食べたいっていうよね。
「そっかぁ。それじゃあしょうがないね」
それを聞いたお姉ちゃんたちは、ちゃんと残しとかなきゃダメだよねってなってくれたんだけど、
「あっ、でもあと2個あるんだから、1個残しとけばいいでしょ?」
キャリーナ姉ちゃんがこんなこと言い出したもんだから、結局パットを1個だけ残して食べちゃう事に。
「お母さんのために作ったお菓子なんだもん。残ったのも、晩ご飯の後に家族全員で食べるべきよね」
それにレーア姉ちゃんまでこんな事を言い出したもんだから、結局お父さんやお兄ちゃんたちは、せっかく作ったギモーヴをちょびっとしか食べる事ができなかったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
セーラー服を着た女の子が日本刀で化け物を切り殺すアニメwで有名なギモーヴですが、前々からマシュマロと何が違うんだろう? って思ってたんですよね。
なにせ食べた感じではあまり違いが解らないし、マシュマロにだってフルーツ味のものがあるので、もしかしたら形が違うだけなんだろうか? なんて考えていたんですよ。
でも実際は大きく違うらしく、マシュマロはメレンゲに砂糖とゼラチンを混ぜて作る料理なのに対し、ギモーヴはフルーツのピューレにゼラチンを混ぜて泡立てて作るそうです。
なので、フルーツの入っていないギモーヴは存在しないんですよね。
なるほど、だからプレーンのギモーヴはどこにも売っていなかったのか。
因みになぜこんなマイナーなお菓子を突然持ってきたのかというと、実はこれ、母の誕生日に買おうかなぁなんて考えていたお菓子なんですよ。
私の母、誕生日と命日が同じ日なんですよえ。
あと1日長く生きてたら、ギモーヴを食べてたんだろうなぁなんて思いながらこの話を書きました。
母にはもう食べさせてあげる事はできませんから、せめてシーラお母さんに食べてもらおうかとw
さて、次回からは元の話の続きを書こうかと思っています。
流石に2か月以上開いてしまったので、皆さんも話の内容を覚えていないかもしれませんね。
私もそうなので、とりあえず書く前に一度、5話くらい前から読み返さないといけないなぁ。